性交痛の基礎知識

性交痛とは、性交時の痛みのことです。性交痛は、外陰部(腟口も含む)に生じる表面的な痛みもあれば、内臓に圧力がかかることによる骨盤内の深い部分の痛みの場合もあります。痛みには焼けつくような痛み、鋭い痛み、締めつけるような痛みなどがあります。

性交時に生殖器の表面に生じる痛みにはさまざまな原因があります。初めて性交をする女性で腟口を覆う膜(処女膜)が損なわれていない場合は、ペニスが腟に入るときにこの膜が破れて痛みが生じたり、出血することがあります。腟が十分にうるおっていない場合にも性交で痛みを感じます(うるおい不足の原因として多いのは、前戯が不十分な場合や、閉経後のエストロゲン値の低下)。生殖器(外陰部、腟、バルトリン腺など)や尿路に炎症や感染を起こしていると、性交時に痛みが生じることがあります。ヘルペスも生殖器に激しい痛みを起こします。

子宮頸部、子宮、卵管の感染症があると、性交後に骨盤内の深い部分に痛みが起こることがあります。このほか子宮内膜症、骨盤内感染症(骨盤腔内の膿瘍[のうよう]など)、骨盤内の腫瘍(しゅよう:卵巣嚢胞など)、感染症や手術の後に骨盤の組織間に生じる癒着などが痛みの原因となります。ときにはこのような病気により、子宮が後ろに傾くことがあります(子宮の後傾)。子宮を支える靭帯(じんたい)や筋肉、結合組織などが弱くなると、子宮が腟の方に下がることがあります(子宮下垂、子宮脱)(骨盤内臓器の脱出を参照)。こうした位置の変化も性交時の痛みの原因となります。癌(がん)の放射線療法により組織に変化が生じ、性交痛の原因となることもあります。

このほかの原因としては、1生殖器のけが、2ペッサリーや子宮頸部(しきゅうけいぶ)キャップのサイズが合っていない、3避妊用発泡剤、ゼリー、ラテックス製コンドームに対するアレルギー反応、4先天異常(処女膜が硬い、腟内に異常な壁があるなど)、5腟の筋肉の不随意収縮(腟けいれん)などがあります。腟が狭くなるような手術(出産時に破れた組織を修復する手術、骨盤底の障害(骨盤底の障害を参照)の手術など)を受けた人も性交時に痛みを感じることがあります。抗ヒスタミン薬を服用すると、腟が一時的にやや乾燥することがあります。また、授乳している間はエストロゲン値が下がるため腟が乾燥しやすくなります。

加齢によってもエストロゲン値は低下するため、腟の内膜が薄くなって乾燥し、萎縮性腟炎(いしゅくせいちつえん)と呼ばれる状態になります。このため性交時に痛みが生じます。

生殖器の表面や深部の痛みは精神的要因によっても起こります。たとえば、セックスパートナーに対する怒りや嫌悪、肉体関係や妊娠に対する恐れ、否定的な自己イメージ、性的経験のトラウマ(レイプなど)がその例です。痛みが精神的要因に起因している場合は、原因の特定が困難な場合もあります。