肥満を生む生活環境
近年の分子生物学の進展によって、肥満は遺伝が大きく影響していることが明らかになっています。実際、民族人種によって肥満率は異なり、性別では、男性より女性の方が肥満率が高い傾向にあります。しかし、肥満が問題となりだしたのは、長い人類の歴史の中でもつい最近のことです。これは遺伝子の不具合があっても、その他の要因がなければ肥満にはならないことを示しています。
そもそも肥満とは、体内に過剰に脂肪が蓄積された状態であり、体脂肪は食事でのエネルギー摂取量がエネルギー消費量より多いときに蓄積されます。つまり、エネルギー消費量が同じでエネルギー摂取量が増えたとき、あるいは、エネルギー摂取量が同じでもエネルギー消費量が減ったとき、肥満になります。
世界的に肥満が増加した大きな要因として、脂肪や糖分の多い高カロリー摂取の西欧型食生活が世界中に広まったことがあげられます。油脂分と糖分を一緒に摂ると、糖分の影響でインスリンが分泌され、吸収された油脂分はエネルギーとして使われるよりも、体脂肪として蓄積されます。
20世紀の後半は、欧米だけでなく経済成長したアジア諸国でも、摂取カロリーが増えています(図表2)。世界中でファストフード店が増加し、24時間営業のコンビニエンスストア、清涼飲料の自動販売機の普及で、いつでも簡単に飲食できる環境になったことの影響も大きいでしょう。
エネルギー摂取量が増大しているにもかかわらず、エネルギー消費量は減少しています。途上国でも車社会が広がり、家事や仕事が機械化し人々は慢性的な運動不足となっています。外出時に自動車依存度が高いアメリカ、イギリスでは歩くことが少なく、他のヨーロッパ諸国より肥満率も高くなっています.
世界で一番、肥満率が高いところは南太平洋ミクロネシアのナウル島で、約8割が肥満。肥満大国アメリカの中でも、肥満者の割合が最も多いのはピマインディアンで、成人の9割が肥満かやや肥満となっています。どちらの場合も自然の中で暮らしてきた伝統的な生活が崩壊し、離農によって消費エネルギーが減少、高カロリー高脂肪な食生活に変化したことが肥満の原因とされています。